30 / 03 / 2023
写真家ナタリー・カンタクシーノとイメージのほころび
ナタリー・カンタクシーノが初めてカメラを手にしたのは、彼女がまだ13歳の頃だった。祖父から譲り受けたドイツ製のフィルムカメラは、霞がかった抽象的なイメージを生み出すものだったが、彼女は写真を撮ることに夢中になった。カンタクシーノにとって写真は趣味であったものの、2015年にスウェーデンから日本へ移住した後、個人的なものからプロとしての仕事まで、幅広い写真の活動を始めることとなった。
彼女が食へと向ける情熱は、その写真からも明らかだ。「私が食に関する写真を撮り始めたきっかけは、20世紀の写真家エドワード・ウェストンを知ったことでした、」とカンタクシーノは言う。「彼は野菜の不思議な形を美しく、官能的に写した写真を多く残しました。食べ物の形を写しとることが目的ながら、それらは女性の身体にも見えるような美しさを持っているのです。」
その多くがフィルムで撮影されたカウンタクシーノのフードフォトは、日本各地のキッチン、ダイニングルーム、そして農場の景色を親密な視点で切り取っている。「ミシュランの星がついた料理であれ、家庭料理であれ、作為的にスタイリングされた食べ物を撮影したくないのです、」と彼女は言う。その結果生み出されるのは、真摯さと生々しさを併せ持ったイメージで、観るものにその食材や料理の背景を想像させるものだ。この特集記事では、彼女の最近の写真をいくつか取り上げ、それらの背景について語ってもらった。
Individual images courtesy of Nathalie Cantacuzino
文責:Ben Davis
翻訳:Futoshi Miyagi
写真:Daisuke Hashihara